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アクセンチュア株式会社

2006年春、アクセンチュアの戦略グループの統括パートナーに西村裕二氏が就任した。弱冠42歳という若さで統括パートナーとなった西村氏だが、戦略グループの黎明期から関わった数少ない存在でもある。
そこで、今回はあらためてアクセンチュアの「らしさ」とはどこにあるのかを西村氏に聞いた。
そのうえで、戦略領域においてもトップ企業となったアクセンチュアが今後どんな新しい方向に進んでいこうとしているのか、そして、求めている人物像についても語ってもらった。

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どんな事業でも本当に大切なのはヒト。それを追求していったらアクセンチュアに行き着いた

今春、戦略グループの統括パートナーとなった西村裕二氏は、東大工学部を卒業後、いったん大手繊維素材メーカーに就職した経験を持っている。当時の自身について「技術にしか興味がない人間でしたよ」と微笑みながら語るのだが、同時に「このときの経験からマネージメントやマーケティングというものに強く惹かれた」とも言う。

「『いいものさえ作れば売れる』と信じて商品開発の仕事に没頭していました。ところが、そう簡単にモノは売れない。売るためには優れたマーケティングやマネージメントが不可欠だと痛感したわけです」

そうした経緯で退職すると大学院に入学。今度は複雑系などの研究を通じて自然界の摂理に多くを学んだのだという。

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「複雑系というと難しい学問のように思うかもしれませんが、要は物事の全体像を捉える視点が問われる領域です。次第にモノや技術にしか興味のなかった私も、ヒトの大事さを意識するようになりました」

「優れた技術によって秀でた製品を作っても、それだけでは売れない。卓越したマーケティング等、経営努力も結実して初めてビジネスは成功する。そして、そこでなによりも大切なのはヒトだ」......これが西村氏の出した結論。大学院修了を前にした2度目の就職活動では「ヒトを重んじる組織」という条件だけで動いたのだという。

「一人ひとりの人材の価値を最重視していて、なおかつ大きな夢を追いかけられる場を探したのです。そして、その条件に最も符合したのがアクセンチュアでした」

コンサルティングファームを目指そう、という希望を持っていたわけではなかった。業種にとらわれずに自身の価値観とマッチする場を探し求めた結果がアクセンチュアだったのだ。

入社を果たした1990年当時、アクセンチュアには戦略をコアミッションとするチームは存在していなかった。だが、戦略グループ創設への気運は高まっていた。西村氏は迷うことなく、この創設に向けたプロジェクトに参画したという。

「それまでのキャリア形成の経緯からもわかるかもしれませんが、私という人間は『普通にやる』のを嫌う面があります(笑)。今までなかった新しい試みに対しては、積極的に手を挙げていきました。戦略グループ創設のプロジェクトでも、当然のことながら最少年次でした」

この時のプロジェクトメンバーは10人ほど。実績のあるそうそうたる顔ぶれが並んでいた。そこに入社間もない大学院修了したての人材が参画できたあたりは、自主性を重んじるアクセンチュアらしさの一端を感じる。その後、西村氏は一時米国へと渡る。「普通にはやりたくない」気概から、北米への駐在にも立候補し、選抜されたのである。そして、在米日系企業とのネットワーク作りという任務で大きな成果を築いてから帰国すると、すぐに設立間もない戦略グループに着任した。

「当時日本では、なみいる北米系グローバルファームが提案の斬新さで勝負をしていました。私たちは戦略の領域では後発組になりますから、もちろん彼らの素晴らしさに多くを学んだりしました。しかし、あの頃からアクセンチュアには独自の価値観があったのです。そして、そのポリシーは今もなお脈々と息づいています」

西村氏が言う「アクセンチュア独自の価値観」とは、「お客様の満足」を最優先する姿勢。西村氏は当時のメンバー同士のこんな会話を教えてくれた。

「『どんなにロジカルで、どんなに正しい提案でも、それを実行する側にとってみれば、モチベーションが上がらないような戦略提案ってあるよね』というのが私たちの共通認識でした。『そうかもしれないが、正しい方策なんだからやりなさい』という姿勢ではいけない。『では、どうすれば現場の人たちがモチベーションを上げるのか』『どうすればワクワクしながら戦略を実行してもらえるか』を考えるのが、私たちの仕事なんだ。という会話を常々していたのです」

2006年の今となっては「当たり前」のようにあらゆるファームが「現場が納得し、進んで改革に着手するように、ともに動く」ことを標榜している。だが'90年代は違った。「提案の正しさ、新しさ」がファームの生命線だと思われていた時代である。そんな時代から、アクセンチュアは「顧客満足」への追求をかたくなに貫いているのである。

今さらながら気がついてみると、西村氏は非常に自然なスタイルで話をする。コンサルタントにありがちな理屈詰めのハイスピードなロジカルトークではなく、微笑みながら平易な言葉で柔らかく話す。設立メンバーであり、なおかつグループ統括パートナーである人が、驚くほどスマートにゆっくりと語る姿勢を持っている。このあたりもまた「アクセンチュアらしさ」なのかもしれない。

2006年の今、戦略グループの役割をさらに明確化して新たなフェイズへ

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設立後のアクセンチュアの戦略部門の成長ぶりは、あらためて詳しく紹介するまでもないだろう。今や戦略グループだけで220名のメンバーを擁するトップ企業である。

そこで改めて西村氏に尋ねた。「今後アクセンチュアの戦略グループは何を目標として動くのか」を。

「まず第一に、お客様の経営をリードするような案件、規模が巨大だったり、複雑さを極めるような案件においてインパクトあるコンサルティングをしていくことです。これまでもアクセンチュアはお客様からとりわけ大きな期待をいただいてきましたし、それに応えることができてきました。今後、期待はさらに大きくなるでしょうけれど、それを喜びとして受け止め、成果を出してお返ししていきたいですね」

顧客満足を1度実現すれば、その顧客はさらに高い期待をする。ここでもまた満足してもらうには、さらなる努力が求められる。この高難度なサイクルを維持してきたアクセンチュアにとって、やはり第一の目標は今後も変わらないということだ。

「もうひとつの目標は、業界を変革するお手伝いをしたい、というものです。個別企業の改革をともに成し遂げるだけでなく、今のアクセンチュアには業界全体の問題を複数の組織とともに解決していく力が備わっていますし、期待もされています。さらに加えれば、日本市場あるいはアジア・パシフィック市場の競争力向上というような、リージョナルな課題にも今まで以上に積極的に関与し、成果を出そうと考えています」

端的な具体例の1つが、今夏発表されたばかりのM&Aチームへの注力だ。M&Aは個別企業の成長戦略としても定着を始めているが、同時に業界再編などの大きな変化も伴う戦略となる。日本市場やアジア・パシフィック市場の競争力向上のためにも大きな影響力を持つ。そこで、アクセンチュアの戦略グループはM&A担当チームを30~50人規模に増加する発表を行った。

「M&Aについては、これまで投資銀行や専門ファームなどが中心になってコンサルティングを行ってきました。しかし、その多くは財務面でのコンサルテーションにとどまっています。M&Aという行為そのものを成立させるだけならば、それでも構わないのかもしれませんが、実はM&Aは企業の経営を大きく揺るがす場合もあります。買収先企業とのカルチャー・ギャップや、事業統合の難しさから問題を抱えている企業も少なくないのです。

大規模なM&Aの成否は、単に1企業の問題ではなく、その業界や日本自体の競争力にも影響を与えます。そこでアクセンチュアでは、プレディール段階からディール・エグゼキューション、ポスト・マージャー・インテクグレーションに至るすべてのプロセスに関わる対応をしています。つまり財務面だけでなく、経営のあらゆる角度から検討と実践をリードしていく。私たちならば、今までにないそうした役割を担えるのです」

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競争力向上の経営戦略としてのM&A。そのあり方や進め方を一気通貫で捉えていけるチームを、アクセンチュアでは短期間で確立しようとしている。成果が上がっていけば、このチームだけでも100人規模まで増員するビジョンもあるのだという。

「戦略グループの3つめの役割は、アクセンチュア自身の成長を加速させる、というものです。『戦略グループがアクセンチュア自体の成長戦略を描き、実現していく』という役目は、以前からありました。しかし、ここへ来て新たな課題も出てきています。ご存知のようにアクセンチュアのビジネスのエンジンは3つあります。1つはビジネス・コンサルティング、もう1つがシステムインテグレーション&テクノロジー、そして3つめがアウトソーシングです。この3つのエンジンが今後どのように成長していくべきか考えるのも私たちのミッションですが、さらにもう1つ、『4つめのエンジンを確立させる』という大きな課題へのチャレンジを今まさに進めているのです」

現状はトップシークレットとのことだが、アクセンチュアが近々驚くようなビジョンを「4つめのエンジン」として発表することは間違いない。そして、そのビジョンを牽引しているのが他ならぬ戦略グループというわけである。

「私たち戦略グループの4つめの役割は、リレーションシップの確立です。具体的にはCXOと呼ばれるかたたち、つまり企業のCEOやCOO、CIOといった経営陣との関係性の維持向上も、私たちの大きな役割の1つなのです」

パートナークラス以上の者だけではなく、全メンバーがCXOとの関係性を大きな任務として果たしていく。そう明言するところも、顧客企業との連動性を重視するアクセンチュアらしさだといえるだろう。だが、西村氏は「アクセンチュアとしての姿勢・方針」だけの問題ではないのだと指摘する。そこには、ここへきての企業経営の変化が背景にあるようだ。

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