最近、食品スーパー業界は大きな変革を迎えています。「仕入れ販売型」モデルから、商品の調達から製造、販売までを一貫して自社で行う「SPA化(製造小売業)」が急速に進んでいます。
この変化は、業界にとって必要不可欠なものとなり、これからの競争力を支える重要な要素として注目されています。では、なぜ食品スーパーはSPA化を進めているのでしょうか?その背景と今後のトレンドについて、求人環境の変化を交えて考えます。
1. SPA化が進む理由とその背景
SPA化の背景には、消費者ニーズの多様化と業界の競争激化が大きく影響しています。過去数十年で消費者は、より高品質で新鮮な商品を求めるようになりました。
また、消費者が重視する要素として「価格の競争力」や「品質の安定性」もあります。そのため、スーパーマーケットは商品の製造から販売までの一貫体制を築くことで、よりコストパフォーマンスに優れた商品を提供できるようになったのです。
また、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、消費者の求める「価格」や「品質」の基準が厳しくなり、従来の仕入れ型ビジネスでは十分に対応できなくなってきました。このような背景から、スーパーマーケットは独自に製造や流通をコントロールできるモデルへと進化を遂げ、今やSPA化が主流となっています。
2. SPA化が生む「プライベートブランド」の強化
SPA化が進む中で、もう一つ重要な要素として挙げられるのが「プライベートブランド(PB)」の強化です。PBとは、スーパーマーケットが自社ブランドで販売する商品で、他のブランド商品に比べて価格が安く、消費者にとってコストパフォーマンスの良い選択肢として人気があります。
SPA化により、スーパーは自社で製造から販売まで行うため、PB商品の品質を一貫して管理しやすくなります。これにより、消費者にとっての魅力的な商品を提供でき、他のブランドとの差別化が可能となります。
PB商品は利益率が高いため、スーパーの収益性にも貢献し、業界全体の競争力強化に繋がります。
たとえば、「オーガニック」や「低糖質」といった特定のニーズに対応したPB商品を展開しているケースもあります。これにより、消費者が求める商品を手に入れることができ、スーパー独自のブランド価値を強化しています。
※高価格帯で品質にこだわった、プレミアムラインのPBも多数登場していますが、歴史的にはコストパフォーマンスの観点でPBが台頭しています。
3. SPA化の具体的な事例
実際に、SPA化を進めるスーパーの事例を見てみましょう。
● 自社工場での製造
自社工場を活用して商品を製造しています。この仕組みにより、商品の品質を直接管理できるとともに、消費者に新鮮で高品質な商品を安定的に提供できるようになっています。
● 地域密着型の商品開発
地元の農家や漁師と協力し、地域特産品を使用した商品を展開するスーパーも増えています。これにより、地域経済への貢献とともに、消費者にとって新鮮で安心な商品を提供しています。
● 物流システムの効率化
物流センターの設置などで商品の配送スピードを改善し、商品が届くタイミングで常に新鮮さを保つ工夫をしているスーパーもあります。効率的な物流システムにより、コスト削減にも繋がっています。
4. 転職マーケット
SPA化が進んでいる中で、食品スーパー業界が求める人材も変わってきました。以前は、主に同業界の経験者が中心でしたが、今ではメーカーの商品開発やマーケティング、製造、物流といった分野での経験を持つ異業種からの転職者も増えてきています。
特に、マーケティング、商品開発や製造プロセスに詳しい人材が求められ、消費者のニーズに即応できる商品および製造ラインの開発や、効率的な流通システムの構築に力を入れる企業が増えています。
また、店舗内の販促がメインの機能であったマーケティング組織が、プロダクトマーケティング(特にPB)を強化する企業も増えており、メーカーのマーケティング経験者の方にとっては、より消費者に近い立場でキャリアを積める機会が広がっていくものと考えられます。5. これからの食品スーパー業界と次に来るトレンド
SPA化が進む中、次に注目すべきトレンドは「消費者ニーズへの柔軟な対応」です。消費者がますます多様化し、より個別化された商品が求められています。健康志向の進化や新たな食文化の登場が予測される中で、スーパーはこの変化に柔軟に対応し、消費者が満足する商品やサービスを提供していく必要があります。
また、地元特産品を活かした商品や、環境への配慮が反映された商品開発も今後ますます進むものと思われます。
ドラッグストアが食品領域を拡充したように、食品スーパー業界が、健康にかかわる商品、体験機会を強化する可能性があります。